舞台 コインロッカー・ベイビーズ その先

 

コインロッカー・ベイビーズの最後、結局あの3人はどうなったのか、原作でもラストは同じような感じで、はっきりとは描かれておりませんが、読んだ人のご想像にお任せしますということなのでしょう。
なので、ここからはあくまで私の想像です。

 

ハシは死んでしまうのではないかと。
ハシはキクが撒いたダチュラを浴びて死んでしまうのですよ。
ハシは生きることを決意した直後にキクに殺されるのです。
皮肉なものです。
キクは面会で狂ったハシを見て、ハシを狂わせた東京ごとハシを殺すことを決意したんでしょう。
2幕の序盤に、アネモネが唄う「殺してあげる」。
あれはアネモネがキクに対して唄っていますが、それを実行するのはキクがハシに対して、になります。
それを意図していたかどうかわかりませんが、ラストシーンの「手首外れた」の時に「殺してあげる」がピアノでワンフレーズだけ流れていました。
キクがハシを「殺してあげる」のです。
では、ハシを殺した後、キクはどうするのか。
自分の勝手な感情だけでハシを殺しておいて、アネモネと一緒にどこか遠くへ逃げて、二人で幸せに暮らすのか。
そんなの許せない、ヘリから転落して死ねばいいのにって、原作を読んだ時からずっと思ってました。
だからラストでキクとアネモネが手つないで出てきた時は、本当にショックでした。
でも、赤坂ACTシアター限定の演出ですけど、本編が終わってカーテンコールで2階にハシとキクが現れた時、ああ、やっぱし二人は一緒に天国へ行ったんだ、って嬉しくなったんです。
単なるファンサービスだったのかもしれないですが、あれは私にとって重要な演出でした。

そもそも、キクにとってアネモネは何だったんだろうかと。
キクは自分をコインロッカーに捨てた「女」を恨んでいて、「女」自体を信用していないのではないでしょうか。
でもキクは義理堅いので、自分を育ててくれた「シスター」「和代」、金銭面で多大な協力をしてくれた「アネモネ」には感謝していて、原作でアネモネと結婚式を挙げたのも、アネモネに対する感謝の気持ちだったのかなと。
ただ、東京を爆撃する前に結婚式を挙げたのは、やっぱしその後死ぬつもりだったのかもしれません。
死ぬ前の恩返しとして。
ヘリのパイロットがキクとアネモネに「君たちはアレかい、サーフシティベイビーズかい?」と問いかけて「いや、俺たちは、コインロッカー・ベイビーズだ」と答えるキク。
この部分は有名なシーンで、原作を読む前からこのフレーズは知っていたので、原作を読む前はアネモネもコインロッカーベイビーだと思っていたのですが、実際アネモネコインロッカー・ベイビーズではないのです。
つまり、キクの言う「俺たち」は自分とアネモネではなく、ハシと自分のことを指しています。

結局キクはハシしか信用してないし、ハシ以外いらないし、ハシがハシでなくなるならハシを殺して自分も死ぬのでしょう。
キクが死んだらアネモネはどうするんでしょう。
後を追って死ぬのかなとも思ったんですが、アネモネは強い女だから、キクを想いながら生き続ける気もします。



以上が私の印象です。

はしふみが舞台「コインロッカー・ベイビーズ」に主演すると知ってから原作を初めて読み、1度しか読んでいないので、もしかしたらどこか勘違いしている部分もあるかもしれませんが…。

原作では登場人物もみんなクズだし、これでもかというくらいに救いようのない退廃感が満載の印象でしたが、舞台になるとだいぶマイルドになっていた気がします。

原作ファンの方にとっては物足りなかったかもしれませんが、この時代に「コインロッカー・ベイビーズ」を表現するにはちょうど良いのではないでしょうか。

 

舞台コインロッカー・ベイビーズ」はエンターテイメントとして本当に素晴らしいものでした。

はしふみがこの舞台に主演したことは、きっと今後の活動の糧になると思います。